今日は“ささのは研究”の日──鈴懸の麩乃餅を包む笹の魅力

先日、久しぶりに街に出て、百貨店をぶらぶらしていたときのこと。和菓子売場の一角に、ふと目をやると、あの福岡の名店「鈴懸(すずかけ)」が。いつもは長い行列ができていて、眺めるだけで通り過ぎるのがお決まりなのに、その日に限って、なんと行列がなかったのです。これは運命!と思い、思わず足を止めてしまいました。

「並ばずに買えるなら…」

そう自分に言い訳をしながら、ついつい購入してしまったのが「麩乃餅(ふのもち)」でした。ふんわりした生麩の生地でこしあんを包んだ、ひんやりぷるぷるのお菓子。もちもちの食感と、やさしい甘さ、そして何よりあの涼しげな“ささの葉”にくるまれた姿の美しさに、つい心がほどけてしまいます。

ですが、麩乃餅はご存じの通り「糖質のかたまり」。健康管理を気にする年ごろとしては、本来なら避けるべき存在…。そこで、私は自分をこう説得しました。

「これは“ささのは研究”の一環。調査対象として購入したのだ」と。

麩乃餅

笹の葉の魅力とは?
麩乃餅を包む笹の葉には、実はとても優れた機能があります。まず第一に、その抗菌作用。古来より、日本ではおにぎりやちまき、和菓子などの保存や包装に笹の葉が使われてきました。笹に含まれるポリフェノールやフィトンチッドなどの成分が、食品の劣化を防ぎ、衛生的に保ってくれるのです。

さらに、あの爽やかな香り。笹の葉は包むものにほんのり香りを移し、風味を引き立ててくれます。香りにはリラックス効果もあるとされており、まさに自然が与えてくれた“食のパートナー”なのです。

また、笹の葉には適度な張りがあり、蒸したり冷やしたりしても型崩れしにくいという特性があります。見た目にも清涼感があり、夏の和菓子には欠かせない存在です。

鈴懸と笹と、津軽の夢
鈴懸は、昭和初期から続く和菓子の名店で、「小さきものは、すべて美しき」という理念のもと、丁寧な職人技でお菓子を作り続けています。その美学は、ただ甘いだけではない、凛とした品のある甘味を生み出しています。

麩乃餅も例外ではなく、食感・香り・見た目、すべてに気が配られている逸品です。そんな麩乃餅の要素の一部を担っているのが、実は笹の葉なのです。

私はふと思いました。いつか、鈴懸の麩乃餅を包む笹が「津軽いろ葉」のものであったらどんなにうれしいだろう、と。

津軽の大地で育った力強くも繊細な笹。その葉が、職人の手を経て、名店の和菓子をやさしく包む。そんな未来が実現したら、きっと津軽の自然と日本の伝統文化が新しい形で結ばれる瞬間になる気がするのです。

だから今日の麩乃餅は、単なるおやつではなく、「研究材料」として心おきなくいただきました。

美味しく、深く、そしてちょっと夢もある“ささのは研究”。

次回は、津軽いろ葉の笹でちまきを包んでみようかな──そんなことを思いながら、午後のひとときを過ごしました。

投稿者プロフィール

Koharun
Koharun
青森県五所川原市相内で生まれ育ちました。大学進学を機に東京に出て、今は相内と東京を行き来しながら、仕事と子育てに追われる毎日を送っています。相内の自然や人のあたたかさ、東京の華やかで刺激的な世界、そのどちらも大好きです。そんな私だからこそできる「津軽の恵み」の届け方があると思い、このプロジェクトを立ち上げました。どうぞよろしくお願いします。