懐かしくて力強い草──ヨモギの香りと力を感じて

お散歩の途中、道端にひっそりと生い茂るヨモギを見つけました。春から初夏にかけて、ふわっと独特の香りを漂わせるこの草は、日本ではとても身近な薬草として知られています。草餅の材料としてもおなじみですが、実はヨモギにはとても奥深い力があるのです。

最近では、ヨモギががんに対して有効な成分を含んでいることが研究で示されています。たとえば、ヨモギに含まれる「アルテミシニン」という成分は、特定のがん細胞に対して効果を示す可能性があるとされ、大学や研究機関でも注目されています。もちろん、これは治療薬としての保証ではありませんが、自然の中にこうした力を持つ植物があることには、素直に感動してしまいます。

そして何より、ヨモギの魅力はその香り。すりつぶすと青々とした香りが広がり、まるで草原に寝転んでいるかのような気分になります。お風呂に入れてもよし、乾燥させてお茶にしてもよし。自然の恵みを全身で感じることができる、まさに万能な薬草です。

実は、我が家にはヨモギにまつわるちょっと変わった思い出があります。夫がある日、突然ヨモギの葉をたくさん摘んできて、天日に干したかと思うと、洗濯板でゴシゴシと擦り出したのです。何をするのかと思ったら、なんと「艾(もぐさ)」を作ると。ヨモギを細かくして天日干しにし、さらに細かくしていくと、艾の材料になるのだそうです。

夫は大阪出身なのですが、昔、おじいちゃんのために「やいと」をすえてあげていたそうで、その思い出をなぞるかのように、楽しそうにヨモギをこすっていました。やいと、というのは関西地方でお灸のこと。艾を小さな球に丸め、ツボの上に乗せて線香で火をともして、じんわり熱を伝える――そんな風景が昔はあたりまえだったのでしょうか。

ただ、残念ながら私にはその光景がまったく想像できません。夫と私ではちょっと世代が違うこともあり、「え? 子どもが親や祖父母にお灸をしてたの?」と驚くばかり。でも、昔はそうやって家族の健康を草の力で守っていたんだなあ、としみじみ思います。

今の私たちは、ヨモギを摘んで天日干しすることは少なくなりましたが、こうして自然の中に足を運び、ふと香るヨモギの匂いに癒される時間もまた、現代人にとっての"お灸"のようなものかもしれません。

今日はそんなヨモギに、心からの感謝を。

投稿者プロフィール

Koharun
Koharun
青森県五所川原市相内で生まれ育ちました。大学進学を機に東京に出て、今は相内と東京を行き来しながら、仕事と子育てに追われる毎日を送っています。相内の自然や人のあたたかさ、東京の華やかで刺激的な世界、そのどちらも大好きです。そんな私だからこそできる「津軽の恵み」の届け方があると思い、このプロジェクトを立ち上げました。どうぞよろしくお願いします。