小さな松の芽に出会って
今日は、朝の散歩中にちょっとした発見がありました。津軽いろ葉の敷地の隅っこ、普段あまり目を向けない場所に、背丈わずか15センチほどの松の芽がひょっこりと顔を出していたのです。
地面にひっそりとたたずむその姿は、まるで控えめな子どもが恥ずかしそうに挨拶しているような雰囲気で、見つけた瞬間、思わず「おや、こんなところに」と声が出てしまいました。

松といえば、大きくどっしりとした木のイメージが強いけれど、誰にだって小さかった頃がある。ましてやこの小さな芽も、いずれは堂々と空に向かって枝を広げる大木になるのかと思うと、なんだか愛おしさがこみ上げてきました。
そして何より感動したのは、この小さな芽がすでに、あの「松の葉っぱ」をちゃんと持っていたことです。大人の松とまったく同じ、細長くて硬そうな、あの独特の葉っぱ。子どものころから「もう松の葉」として完成されているというのは、植物の世界の渋さというか、潔さのようなものを感じます。
人間だって、赤ちゃんの頃は全然違う姿をしているのに、松は15センチの時点で「松らしさ」をすでに身にまとっている。それがとても面白くて、しばらくその場でしゃがみこんで眺めてしまいました。
松の芽の豆知識
ちょっと調べてみたところ、このような若い松の芽は「実生(みしょう)」と呼ばれ、松ぼっくりからこぼれ落ちた種が自然に発芽したものです。まさに自然のめぐみそのものですね。
松の仲間は、成長がとてもゆっくりです。この15センチの芽も、おそらく2〜3年かけてここまで育ったのかもしれません。そして、葉っぱについても驚きの事実がありました。
多くの人が「松の葉は2本セット」と思っているかもしれませんが、実はこれは種によって異なるんです。たとえば、アカマツやクロマツは2本、ゴヨウマツ(五葉松)は5本セットになっています。今日見つけた松の芽は、2本ずつ葉が出ていたので、たぶんアカマツかクロマツ。こういうちょっとした観察で植物の種類を見分けられるのも、自然観察の楽しさのひとつですね。
また、松の葉には意外にも多くの効能があることが知られています。たとえば、お茶にしたり、入浴剤として使ったりと、日本では古くから生活の中で親しまれてきました。特に、ビタミンCが豊富で抗酸化作用があるといわれ、近年では健康志向の人々の間で「松葉茶」が注目を集めているとか。あの渋い風貌の葉っぱに、そんな力があるなんて、ちょっと感動です。
渋くて、強くて、静かな植物
こうやって松という植物をあらためて観察してみると、本当に「静かに強い」という表現がぴったりだなと思います。派手な花を咲かせるわけでもなく、季節ごとに劇的な変化を見せるわけでもない。それでも、どっしりと根を張り、少しずつ少しずつ、確実に成長していく姿に、私たちは昔から安心感や尊敬の念を抱いてきたのでしょう。
そして、あの小さな松の芽も、10年、20年と歳月をかけて立派な木に育っていくのかと思うと、ふと「自分もがんばろう」と励まされるような気持ちになりました。
ちなみにその場所、子どもがよく遊ぶエリアなので、「この芽、うっかり踏んじゃわないように気をつけてね」と注意を呼びかけようと思います。未来の松の巨木に敬意を込めて。
投稿者プロフィール

- 青森県五所川原市相内で生まれ育ちました。大学進学を機に東京に出て、今は相内と東京を行き来しながら、仕事と子育てに追われる毎日を送っています。相内の自然や人のあたたかさ、東京の華やかで刺激的な世界、そのどちらも大好きです。そんな私だからこそできる「津軽の恵み」の届け方があると思い、このプロジェクトを立ち上げました。どうぞよろしくお願いします。
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